前兆が分かりにくい胃がん
食道と十二指腸のあいだには、袋状の消化管である「胃」があります。胃の壁は内側から粘膜、筋層、漿膜といった層によって形成されています。食道から送り込まれた食べ物をため、胃酸でタンパク質や脂肪を消化し、腸へと送り出すというのが基本的な機能となります。
そして「胃がん」は、胃粘膜でがん細胞が生じ、その後無秩序に増殖していくことで発生するがんのことを指します。増殖したがん細胞は、粘膜から筋層、漿膜、そして大腸・膵臓・肝臓・横隔膜など付近の臓器への浸潤、リンパ節などへの転移として拡大していきます。
胃がんは総じて、自覚症状に乏しいという特徴を持ちます。特に早期には、ほとんど無症状のまま進行するケースが少なくありません。
また、胃の壁にしみ込むように拡大していく「スキルス胃がん」は粘膜の変性の見分けがつきにくく、進行も早いため、定期的な胃カメラ(内視鏡)検査で早期に発見することが重要になります。
胃がんの原因は?
ピロリ菌感染、喫煙、食習慣の乱れなどが原因と言われています。食習慣においては、塩分の摂り過ぎ、野菜・果物の摂取不足などが挙げられます。
中でもピロリ菌の感染は、最大の胃がんリスクと考えられます。胃がん患者のほとんどが、ピロリ菌に感染していたという報告もあります。
その他、胃炎や胃潰瘍の既往がある人も、そうでない人と比べると胃がんのリスクは高くなります。
胃がんの症状チェック
~胃がん発覚のきっかけ~
- 胃の不快感、痛み
- 食欲不振
- 胃もたれ、胸やけ
- 吐き気
- 嘔吐
- 倦怠感
- 下血、タール便
特に早期の胃がんは、上に挙げたような症状がほとんど認められないことが少なくありません。
自治体や勤務先で行われる健康診断やがん検診、あるいは自主的な定期的な胃カメラ(内視鏡)検査を受け、胃がんなどの疾患の早期発見・早期治療に努めましょう。
胃がんの検査・診断
胃がんの検査では、胃カメラ(内視鏡)検査やバリウム検査が行われます。
バリウム検査では、バリウムを飲んだ上で、胃をX線で撮影します。比較的費用が抑えられるというメリットがありますが、がんの大きさ、発生した部位によっては、見落としてしまう可能性が高くなります。
一方の胃カメラ(内視鏡)検査では、内視鏡を通して胃の粘膜をほぼ死角なく観察することが可能です。また、特殊なライトで炎症部を強調して早期発見につなげたり、疑わしい組織をその場で採取したりといったこともできます。
また、確定診断は胃カメラ(内視鏡)検査なしではできません。早期に、正確に発見するためにも、やはり胃カメラ(内視鏡)検査がおすすめです。
胃がんの治療
早期の胃がんについては、胃カメラによる切除が可能です。進行の程度によっては、外科手術や化学療法が必要になります。
必要に応じて、速やかに提携する病院へとご紹介することができます。
内視鏡的治療
内視鏡的粘膜切除術(EMR)は、比較的小さながんの場合に選択される術式です。粘膜下層に液体を注入してがんを持ち上げ、内視鏡の先端からスネア(輪っか状の器具)を出し、切除します。
より広範囲のがんに対しては、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が選択されます。粘膜下層に液体を注入してがんを持ち上げるところまではEMRと同じですが、その後内視鏡の先端からメスを出し、切除します。
外科手術
ある程度進行している場合には、手術が必要になります。
がんを含めた胃の一部、またはすべてを摘出します。近年は、侵襲の小さい腹腔鏡による手術も増えています。
化学療法
抗がん剤を内服または点滴で投与します。外科手術の前後に行われるのが一般的です。
また、手術後に再発した場合や、遠隔転移があり手術の適応外となる場合には、化学療法が治療の中心となります。
胃がんになったときの
生存率
早期の胃がんについては、5年生存率は90%を超えており、治癒は十分に期待できます。
一方で、進行がんとなると5年生存率は50%を下回ります。特に、リンパ節や肝臓への転移が認められ、手術でも完全にがんを切除できない第IV期の胃がんについては、10%以下となります。
胃がんの治癒を目指すためには、胃がんの早期発見、すなわち定期的な胃カメラ(内視鏡)検査が非常に重要な意味を持ちます。