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食道裂孔ヘルニア

胃が横隔膜からはみ出る
「食道裂孔ヘルニア」

胸腔と腹腔を分ける膜を「横隔膜」と言います。食道はこの横隔膜を貫通するように通り、胃の上部とつながっています。そして食道が貫通する横隔膜の孔(あな)が「食道裂孔」です。食道裂孔は、私たちが食べ物を食べる時に開き、食べていない時には閉じています。
「食道裂孔ヘルニア」とは、いくつかの原因によって、横隔膜より下にある胃の上部が、食道裂孔から胸腔へと飛び出している状態です。大きく、以下の3つに分けられます。

滑脱型

胃の入口(噴門部)が胸腔側へと飛び出しているタイプです。
この3つの中で、もっとも起こりやすいヘルニアです。

傍食道型

胃の入口以外の部分が胸腔側へと飛び出しているヘルニアです。

混合型

滑脱型、傍食道型の両方が混在しているヘルニアです。

食道裂孔ヘルニアに
なりやすい要因と原因

食道裂孔ヘルニアは、食道裂孔が緩むことで起こります。食道裂孔の開閉は下部食道括約筋が担っていますが、加齢によってその筋肉が衰えることで、誰にでも起こり得るものと言えます。 腹圧を上昇させる肥満、不良姿勢、気管支喘息・慢性気管支炎などが発症に影響することもあります。

  • 50歳以上
  • 肥満
  • 姿勢が悪い
  • 喫煙者
  • 気管支喘息・慢性気管支炎などの持病

痛みはある?
食道裂孔ヘルニアの症状

痛みはある?食道裂孔ヘルニアの症状
  • げっぷ
  • 胸がつかえる
  • 胸やけ
  • 胃酸が上がってくる
  • 胸痛
  • 吐き気

食道裂孔ヘルニア自体には、特徴的な症状がありません。
しかし、下部食道括約筋の緩みに伴い胃酸が逆流している場合には、上記のような症状が見られます。

 

食道裂孔ヘルニアの
検査・診断

内視鏡検査

胃カメラで、食道裂孔ヘルニアの状態を直接観察する検査です。食道・胃・十二指腸の粘膜の病変を、早期に発見することができます。
当院では、ご希望に応じて鎮静剤を用いた内視鏡検査を行います。半分眠ったような状態で、ほとんど苦痛なく検査を受けていただけます。
また経鼻内視鏡、経口内視鏡のいずれにも対応します。

胃カメラについて
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X線検査

バリウムを飲み、レントゲン検査を行います。いわゆる「バリウム検査」です。
ヘルニアの有無、大きさ、タイプが分かります。

食道裂孔ヘルニアの治療

食道裂孔ヘルニアに伴い、胃酸の逆流などがある場合には、以下のような治療を行います。無症状である場合には、経過観察に留めることもあります。

生活習慣の改善

生活習慣の改善胃酸の逆流を防ぐため、生活習慣を改善します。
食べ過ぎ、飲み過ぎ、早食いを控え、特に肉類・脂質の摂り過ぎに注意します。
また、肥満の解消、締め付けの強いベルト・服を着用しない、寝るときに少しだけ上半身を高くする、姿勢を改善するといったことも、症状の改善に有効です。

薬物療法

胃酸の分泌を抑える薬、食道粘膜を保護する薬、食道や胃の蠕動運動を促進する薬などを使用します。

手術療法

ここまでの治療で十分な効果が得られない場合には、横隔膜の緩みを改善し、胃酸の逆流を防ぐ手術が必要になることもあります。
現在は、腹腔鏡での手術が一般的になっています。

痩せると治る?
食道裂孔ヘルニアが
自然治癒する可能性

肥満や不良姿勢など、腹圧の上昇を原因としている場合には、減量や姿勢の改善によって治癒する可能性があります。ただし、通常は複数の要因が重なって発症するものであり、ご自身で治そうとするのは適切ではありません。
また減量にしても、医師の指導のもと、食事療法・運動療法に取り組まないと、逆に健康を損なったり、リバウンドを起こしてしまう可能性が高くなります。さらに、すでに胃酸の逆流が起こっている場合には、ヘルニアの自然治癒を待っていては、食道粘膜のダメージも大きくなります。
食道裂孔ヘルニアは、無症状の場合には経過観察に留めることもありますが、必ず医療機関で診断・治療を受けるようにしてください。

コーヒーは食道裂孔ヘルニアに良くない?
自分でできる予防策

食道裂孔ヘルニアは、胃酸の逆流を引き起こす原因となります。胃酸の逆流を繰り返していると、食道の粘膜が炎症を起こす逆流性食道炎を合併することがあります。
逆流性食道炎を予防するために大切なポイントをご紹介します。

脂肪の多い食事、甘いものを食べ過ぎない

脂肪の多い食事、甘いもの(チョコレート、あんこ等)は、胃の中に長く留まり、過剰な胃酸の分泌を促す原因になるため、食べ過ぎないようにしましょう。

下部食道括約筋が緩む原因になるものを摂りすぎない

脂肪の多い食事、アルコール、炭酸飲料は、下部食道括約筋が緩む原因になります。下部食道括約筋が緩むと、胃酸の逆流が起こりやすくなるため、摂り過ぎには注意してください。喫煙も同様の影響が心配されます。

腹圧の上昇を引き起こす服装・行為を避ける

締め付けの強い服装、長時間の前かがみの姿勢、食後すぐの筋トレ、重い物を持ち上げるといったことは、腹圧の上昇につながります。胃酸の逆流の原因となることがあるため、できる限り避けてください。

食後や就寝時の姿勢に注意する

胃酸の分泌が活発な食後に横になると、胃酸の逆流の原因となるため、避けるようにしてください。
また就寝時は、寝具を工夫するなどして頭がやや高くなる姿勢をとると、胃酸が逆流しにくくなります。

コーヒーなどの胃酸の分泌を活発にするものを避ける

カフェイン入り飲料、柑橘類、香辛料などは、胃酸の分泌を促進します。摂り過ぎないようにしてください。またコーヒーについてですが、カフェインレスのものにもクロロゲン酸という物質が胃酸の分泌を促進するため、やはり摂り過ぎないようにしてください。